Insufficient Bone 骨が足りない方の治療
インプラントを埋め込む部分の顎骨に十分な骨がない場合は、安全に埋め込むことができないため、骨を増やす骨造成術や骨移植手術を行う必要があります。増やしたり移植したりする骨について、当院では主に自家骨(患者様ご自身の顎骨から採取した骨)、または牛骨(商品名Bio-Oss※)を使用しています。どちらをしようするかについては、コンサルテーションの際にお話し合いのうえ選択させて頂きます。いずれにしても、しっかりと患者様にご説明して不安を払拭いただき、同意を得たうえで使用しています。※世界的にコンセンサスの得られた骨移植材で、成功率の高さは多くの海外文献で立証されています。日本でも認可されており、国内での購入が可能です。
サイナスリフト法について
サイナスリフト法とは
サイナス(上顎洞)の粘膜をリフト(挙上)して、そのスペースに骨補填材を移植充填し、上顎洞内に骨造成を行う方法です。
主なリスクとしては、副鼻腔の合併症などによる術後感染がありますが、歯科用CTを用いた術前の正確な診断と治療計画(※)、術後の的確な抗生剤の投与により、リスクを最大限に減らすことができます。
この方法は、世界的に成功率が高いとされていますが、難しい手技が要求される手術です。院長は、当院および外部出張先での症例を含め300を超える症例に携わっており、海外の一流大学でサイナスリフトの技術指導を行なってきていますので、安心してお任せください。
※リスクのあるケースは、耳鼻科との対診や治療を行っています。
サイナスリフト法の流れ
サイナスリフト法は、通常以下のような流れで進めます。
麻酔を行います。
インプラント埋入予定部位の上顎洞の側方の歯肉を切開し、剥離させて顎骨の側面を露出させます。上顎洞を覆う膜を傷付けないように、露出した骨に穴をあけます。
膜を剥離して小さなスペースを作ります。そこに骨補填材を入れ、骨にあけた穴をふさいで剥離した歯肉を戻し、縫合します。
骨量が少ない場合、骨が再生するまで約6ヵ月待ってからインプラントを埋入します。同時にインプラントを埋入できた場合、骨補填材が骨に置き換わるまで約3~6ヵ月安静にします。骨が再生したら、通常のインプラント治療の流れに沿って残りの治療を行います。
サイナスリフト法のメリット・デメリット
メリット
極端に骨量が少なくても治療できる
サイナスリフト同様、ソケットリフトという骨造成があり、それは顎骨に5mm以上の高さが必要です。しかし、サイナスリフトであれば、顎骨の高さがそれ以下でも処置できます。
隣接する歯を複数本治療する場合に有効
インプラントを埋め込む穴から骨を増やすソケットリフトでは、インプラントの本数分の処置が必要です。しかし、サイナスリフトは上顎洞に直接アプローチでき、一度に広範囲の骨を増やせるので、隣接する部分に複数本のインプラントを埋め込む場合に有効です。
デメリット
治療期間が長くなる
サイナスリフトを行うのと同時にインプラントを埋め込める場合もありますが、補填した人工骨が安定した結合を得るまで6~10ヵ月ほどかかるため、トータルの治療期間が長くなります。同時にインプラントを埋め込めない場合はさらに長くなります。
患者様への負担が大きい
インプラントの埋入手術とは別に、歯肉の切開や骨の切削が必要になるので、その分、治療後の痛みや腫れが強くなることが多いです。患者さまの身体にかかる負担が大きくなるうえ、治療期間も長くなります。
GBR法について
GBR法とは
歯周病によって失われた歯周組織(歯の周囲にある、歯の機能を支持する組織)を再生するためのGTR(歯周組織再生誘導)法の応用で、歯槽骨(歯を支える顎骨)の再生に特化した治療法です。「骨誘導再生法」ともいいます。
虫歯や外傷などで歯を失ったり、歯周病が悪化してしまうと、歯槽骨が吸収されてやせてしまいます。GBR法は、このような理由から骨が足りない場合、インプラントを埋め込みたい位置に行う治療のひとつです。インプラントを埋入したあと、骨が少ない部分を骨補填材で補い、メンブレン(人工膜)で覆ってスペースを作り、骨を再生させます。
GBR法の流れ
歯槽骨に、インプラントをしっかりと埋め込める量がない場合、GBRで骨造成を行います。歯槽骨の状態によっては、GBRで骨造成したあとにインプラントを埋め込む場合もあります。
歯槽骨が不足している部分を骨補填材で補い、メンブレンで覆います。歯肉などの軟組織が入り込まないようスペースを確保し、骨の再生を誘導します。
歯肉を閉じて縫合します。
骨の再生と、インプラントと歯槽骨との結合期間(4~6ヵ月程度)をおいて、アバットメント(人工歯との土台)と人工歯を装着したら治療が完了です。
GBR法のメリット・デメリット
メリット
骨量が少なくても、インプラントを埋め込める
通常、インプラントを埋め込む位置の骨量が少ないと治療できませんが、GBRで骨造成を行うことで、骨量が少ない症例でもインプラント治療を行えます。
審美性を回復できる
虫歯や外傷、歯周病などで歯槽骨が減ってしまい、歯肉が痩せて見えるような場合、骨造成で審美性を回復すできます。前歯などの目立つ部位においてはとても有効な治療となります。
デメリット
治療期間が長くなることがある
骨の状態が悪く、GBRとインプラントの埋入手術が同時に行えない場合は、骨が再生するまでの治療期間が長くなります(4~6ヵ月程度)。同様に通院回数も多くなります。
痛みや腫れ、感染症のリスクが上がる
GBR法は、歯肉を切開して歯槽骨から剥がし、施術を行います。このため、術後の痛みや腫れが出るリスクが高まります。また、複雑な手術になるので、感染のリスクも多少上がります。
費用が高額になる
骨造成手術が追加されるため、インプラント治療の総額が高くなります。